ホテル・旅館の省エネ対策。電気代などのコストを削減する方法とは
2020.07.13その他ホテル・旅館の経営において、客室稼働率アップと原価率低減、そして経費削減は欠かせない要素です。このうち、省エネによる電気代などの光熱費削減は、継続して取り組むべき課題の一つといえます。
今回は、ホテル・旅館のエネルギー消費の特徴や、省エネのポイントについてご紹介します。
ホテル・旅館における経営コストを見直そう
ホテル・旅館経営には、どのようなコストが発生するのでしょうか。
一般財団法人日本旅館協会が2020年に発表した「令和元年度版 営業状況等統計調査」によると、原価を除く経費のうち最も割合が高いのは「人件費」で、ホテルでは37.9%、旅館では34.0%となっています。これに続くのが、水道光熱費などからなる「業務費」。ホテルが15.0%、旅館が16.2%に上ります。以下、リース料などの「管理費」、広告宣伝費などの「営業費」、そして「減価償却費」「支払利息」と続きます。
宿泊業は労働集約型産業であるため、ある程度の人件費が掛かることは避けられません。コストの見直しを図るのであれば、次いで経費としての割合が大きい光熱費を中心とした業務費にフォーカスを当てるのが良いでしょう。
ホテル・旅館のエネルギー消費の特徴
光熱費の削減について考える前に、ホテル・旅館のエネルギー消費にどのような特徴があるのか、財団法人省エネルギーセンターの資料(https://www.eccj.or.jp/hotel/hotel.pdf)を元に確認します。
季節性
省エネルギーセンターの資料によれば、1年間のうち最もエネルギーの消費量が大きいのは7月と8月です。大きな要因の一つは冷房の使用。熱負荷と電力使用量双方が上昇することで、多量のエネルギーを消費すると考えられます。冬場の1月・2月には、電力使用量は低下しますが、暖房の使用により熱負荷が上昇する傾向にあります。
時間帯
次に、時間帯別のエネルギー消費の状況について確認します。給湯負荷を指標にした推計では、午後10時前後にピークを迎え、翌朝7~10時に2度目のピークが確認できます。お客さまが夕食を済ませ就寝するまでの間、起床してチェックアウトするまでの間にエネルギー消費が高まることがわかります。
場所
館内の部門別のエネルギー消費についても見ていきます。エネルギー消費原単位に着目すると、宴会・飲食部門で比較的大きい傾向にあります。しかし消費量については、客室を中心とした宿泊部門が最大。電力のほか、水や給湯の使用量も大きく、ここがコスト削減の要と考えられます。
なぜホテル・旅館で省エネ対策をする必要があるのか
上記のようなホテル・旅館におけるエネルギー消費の特徴を踏まえた省エネ対策を行うことで、効率的な光熱費削減が期待できます。
ホテル・旅館で省エネが必要とされる理由はコスト削減だけはありません。化石資源を自給できない日本では、オイルショックを契機に1979年に省エネ法が制定され、時代に合わせて改正が行われてきました。
同法では、ホテル・旅館を含む事業者に年平均1%以上の省エネを行うことを促しています。今や省エネは「企業の社会的責任」と位置づけられているのです。
ホテル・旅館で光熱費削減のために今すぐできること
ここでは、ホテル・旅館の光熱費削減に効果的な、今すぐできる施策について見ていきます。
スタッフができること
スタッフ側でできることの一つが、客室清掃時やバックヤード・事務所など、お客さまがいない状況下での省エネです。自然採光を利用したり、電球を間引いたりするなど、照明の節約のほか、空調を控えめにすることも考えられます。これらをマニュアル化し、スタッフに実施を徹底することが重要です。
また、照明に白熱球を使用している場合、蛍光灯やLEDタイプの電球に取り替えることも効果的です。特に、ロビーや廊下など常時点灯している照明を交換することで、大きな省エネ効果が期待できます。
お客様側に協力をお願いしたいこと
お客さまに省エネのご協力をいただくことも大切です。食事などで外出する際の消灯や、空調の設定温度の適正化などを地道に啓蒙していきましょう。また、客室冷蔵庫の電源を落としておく、客室カーテンを閉めておくなどの省エネ対策を行い、チェックイン時の説明や掲示物で省エネについてお客さまの理解を促すことも一つの方法です。
宿泊施設の建築時・改修時にできること
こうした日々の対策のほか、省エネに対応した設備を導入することも大きな効果をもたらします。エネルギー効率の良いボイラーや空調機などのほか、各客室へのカード式電気スイッチの導入も考えられます。
省エネに最適なカード式電気スイッチ
カード式電気スイッチとは、カードキーの有無に連動して、客室内の照明や空調のオンオフを管理できる省エネシステムです。お客様が客室から退出する際には必ずカードキーが必要となるため、必然的に退出時に消灯され、空調も切ることができます。
おわりに
ホテル・旅館の省エネは、施設規模の大小に関わらず取り組まなければならない課題です。サービスレベルとお客さまの快適な滞在環境を維持しながら電気代などのコスト削減を行うことは簡単ではありませんが、地道な取り組みが大切です。
スタッフへの意識付けやお客さまへの啓蒙、そして適切な設備更新を行うことで省エネを推進し、効率的な経営を実現しましょう。
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